さあ、好きになりましょうか。
あたしと神田は中学のときから仲がよかった。それで高校に入る頃には気心の知れた仲だった。


恋心を抱いたのは、あたしだけだった。


傍にいながらこの気持ちを隠しているのは辛かった。だから伝えた。「二度目の告白」の卒業式の一年半前、二年生の10月だった。


神田に思いを伝えたのはこの時が初めてだった。


直接告白した。でも、その時神田は「ありがとう。嬉しいよ」としか言わなかった。


その次の日からはまたいつもの、神田と仲良くする日々が続いた。


曖昧にされた。あたしの気持ちだけが残った。


でもあたしは神田に直接答えを求めることが怖かった。あっちから言ってくれればよかった。でも何も言ってこない。聞いて振られることが怖かった。


内心返事がないままでもいいと思っていた。


それから一月後、あたしは神田の家に呼ばれた。中学のときからお互いの家を行き来していた。だからこの時も何の考えもなしに神田の家に上がった。


軽率だったと思う。でも、この時のあたしには知識が全くなかった。


「……そういうもんですか?」


今まで黙ってあたしの話を聞いていた関谷が口を挟んだ。


「だって、高二ですよね? 俺と同い年じゃないですか。俺、それなりに知識ありますけど」

「女子はね、男と縁がないとけっこうそういうものに疎いんだよね。あたしの友達も当時みんな彼氏いなかったから情報全く入ってこなかったし。どういうことをするかを知らなかったわけじゃないけど、それ以外の知識はさっぱりだった」

「そういうもんですか」

「そういうもんよ」


信じられないという顔で見られたけど、これが男女の差というやつなのだろう。あまり気にしないでおく。


あの時はいまだに鮮明に思い出せる。忘れたくても忘れられない。


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