さあ、好きになりましょうか。
「……まあ、よく犯されるだけじゃなくてキスまで回避できましたね。愛子さん、俺惚れ直しますよ」

「皮肉か」


関谷は苦笑してコーラをストローで啜った。


「素直なところはあんたのいいところだけど、たまに素直すぎるよ」

「あざっす」

「褒めてねえよ」


あたしはため息をついて冷めた紅茶をプラスチックのスプーンで掻き混ぜた。


「それが、俺に話してなかったことですか?」

「……そうだけど」

「よかった」


ふっと関谷が笑みを零した。


「……そう?」

「よかったですよ。何もされなくて」

「されかけたけどね」

「でも、結局愛子さんは何もされなかった。愛子さんの初めてをもらえる可能性が俺にもあるんですよね?」

「はっ…………」


飲んでいた紅茶を吹き出しそうになって、あたしは咳き込んだ。


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