さあ、好きになりましょうか。
あたしの初めてのキスはすぐに離れて、関谷が両腕をあたしの首に回して再び口づけた。
 

二人の体が密着する。さっきより関谷の唇を感じる。熱い。


関谷の唇が開いてあたしの唇を包んだ。思わずびくりと体を震わせたけど、されるがままになっていた。


男の子の唇って柔らかいんだ。二人の熱い吐息が混じり合う中あたしはぼんやりと思った。


心臓が痛い。このまま胸が張り裂けそうだ。体の奥がジンジンと熱い。頭が真っ白になって何も考えられない。ただ関谷に身を委ねる。


ただ関谷を求めている。もっと、もっと。足りない。


このキスであたしの気持ちがそのまま伝わればいいのに。ばからしい考えが頭を過ぎった。


唇を重ねたまま関谷の片腕が離れた。そしてブラウスのボタンが一つ外された感覚を覚えた。


「せきっ──」


唇が離れたと頭で理解した時、関谷はあたしの鎖骨の下に顔を埋めていた。ゆっくりと吸われる感覚に体がわずかに震えた。


鎖骨から唇を離した関谷は、再びあたしの首に腕を回した。


「好きだ」


関谷が耳元で囁いた。低い声があたしの鼓膜を震わす。その声色にあたしの体の奥底の何かが疼いた。


「愛子さんが好きだ。今すぐ奪っちまいたいくらい好きだ。他の男になんか渡したくねえ」


珍しく余裕のない切羽詰まったような声に、あたしは泣きたくなった。


ねえ、なんでそんなに一途なの?


なんでそんなにあたしを求めるの?


なんでこんなあたしが好きなの?


こんなあたしを好きになったら、関谷がもったいない。


お願いだから、あなたはもっと可愛い子の元へ行って。


あたしが虚しくなるから。


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