さあ、好きになりましょうか。
家に帰ってベッドに横になってしばらくぼーっとしていた。


蘇るのは、さっき不意に見せた切羽詰まったような余裕のない表情。


色っぽかったなあ……なんて、場違いなことを思った。


やっぱり関谷は男だ。関谷の男の部分を見せられてしまった。わかっていたけど、いざ見せられるとやはり戸惑いが大きい。


唇にはまだ関谷の熱が残っている。柔らかくて熱かった。関谷の唇の感触を思い出しては、一人で頬が熱くなった。


あの時、関谷も震えていた…………。


じわりと目の奥が熱くなって、その熱は涙となって耳にかけて流れた。


あの後、別れ際に関谷が言った。


『なんで拒否らなかったんですか』


あたしはごめんと呟くしかできなかった。


「ごめん…………」


ごめん、関谷。


キスしてごめん。


関谷のキスを受け入れてごめん。


何も言えなくてごめん。


ごめんとしか言えなくて、ごめん。



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