さあ、好きになりましょうか。
『好きだ』


関谷の声が蘇る。


はっきり、言われた。


今まで関谷に何度も言われてきた言葉だけど、今日の告白ほど心にまっすぐ届いたのはなかった。


いつも冗談半分で軽々しく口にするくせに。


真剣な眼差しで言うなんてずるい。


あんな風に言われたら、あたしはますます言えなくなるじゃない。


情けない。自分が情けなくてたまらない。


関谷にばかり言わせて、あたしは何一つ言えない。自分の気持ちの断片すら言葉にして伝えられない。


相手が年下だからとか、あたしの方が年上だからなんて関係ない。あたし達が同い年でも、あるいは関谷が年上でもあたしが自己嫌悪に陥ることに変わりはない。


食欲はなかった。さっき食べたからかもしれない。時計を見ると7時を過ぎているのに空腹を感じなかった。


起き上がって冷蔵庫を開けた。中に見慣れないものがあることに気づいた。


「……チューハイ?」


あたしは未成年だ。当然店で酒は買えない。だから飲み会以外で酒を手にしたことはない。


冷蔵庫の中を覗くと、同じ銘柄の缶が10本ほど入っていた。味は違うようだけど、全部チューハイだった。


こんなもの、昨日はなかった。


あたしはふと思いついてスマホを手に取って七海に電話をかけた。すぐに『もしもし?』と電話の向こうから声が聞こえた。


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