さあ、好きになりましょうか。
「あのさ、冷蔵庫の中に大量の酒があるんだけど、もしかして七海の仕業?」

『そうだよー。覚えてない? 昨日の居酒屋のおじさんが私達のことを気に入ったらしく余ってるからって大量にくれたの。でも私、ハイボールか焼酎しか飲まないから関谷くんに愛子の家の冷蔵庫に入れといてって押し付けたの。当分晩酌には困らないわよー』

「ハイボールか焼酎って、あんたは中年のおじさんか」


しかも、未成年に酒を押し付けるとか、こいつはどんな神経をしてるんだ。関谷が黙って持ち帰る可能性だってあったのに。まあ、昨日の反応からして常識は持っているからそんなことはしないだろうけど。


『どうせなら、関谷くんに飲ませてみれば? どんな酔い方するか見てみたいんだけど』

「やだよ。高校生に酒は飲ませません」


七海、あたしは君の精神状態が心配だよ。


もちろん、あたしは無防備な高校生に酒を強要するほど最低な人間ではない。


「まあ、いいや。とりあえず謎は解けたから」

『関谷くんにお礼言っとくのよー』

「はいはい」


もう、会ったけど。


そういえば、ありがとうの一言すらあたしは言えていない。


唇を噛み締めて電話を切った。


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