さあ、好きになりましょうか。
あたしは冷蔵庫からチューハイの缶を二本取り出して部屋に戻った。


適当に取った缶は、一つは季節外れな夏みかん味と、もう一つは桃味だった。あたしは夏みかんの方のプルタブを上げて口づけた。


「……まずい」


思わず顔をしかめた。酒臭い。


いつも飲み会で飲む酒はビールを除いてあまり酒臭くないものが多い。焼酎や日本酒も飲まない。飲み口がいい甘いものばかり飲んでいた。昨日のレモンハイも酒臭いとは思わなかった。


缶だとこんなに酒臭く感じるのか。


それでもあたしは続けて缶の中身を飲んだ。柑橘系の香りと酒の臭いが鼻をつく。酒の刺激が喉を内側から刺す。


一気に一缶飲み切って、あたしは唇に残る関谷の温もりが消えていく感覚に襲われた。同時に体が内側から熱くなる。心臓がドクドクと急に強く鼓動を打ち始めた。


あたしはもう一つの缶を開けた。そして一気に煽った。


酒臭い。桃とアルコールの味。まずい。


それを飲み切って、あたしは音を立てて空き缶をテーブルに置いた。


頭の中は関谷のことでいっぱいだった。


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