さあ、好きになりましょうか。
あの目に捕われたらもう逃げ出せない。抵抗する術はない。


怖いと感じると同時にその眼差しを愛しいと思ってしまった。余裕のない、熱を孕んだ瞳。


それでも、なんで拒否らなかったのか。関谷にも言われた。拒もうと思えばできた。実際、神田の時は全力で拒否った。


同じ好きな人なのに、どうして神田の時は拒否って、関谷は受け入れたのだろうか。


同情? 余裕のないあの瞳に負けた? それとも、関谷があたしを好きだとわかっていたから?


あたしは、なんてずるい女だろうか。


どちらも大別すれば無理やり「された」のに。


ああ、あたしは関谷を苦しめたんだ。


曖昧な態度は人を苦しめる。それをよりによって好きな人に。あたしはなんて最低な人間だろうか。


< 117 / 148 >

この作品をシェア

pagetop