さあ、好きになりましょうか。
9.伝わらないで
気付いたときは昼の11時過ぎだった。


あたしは布団もかけずにカーペットの上で寝てしまっていた。秋は布団がないと冷える。


のそのそとベッドに移動して布団にくるまった。時計を覗き込むとAM11:08と表示されていた。


「今日は…………土曜か」


安堵でため息が出た。学校も部活も休みで助かった。バレー部は体育館の使用の関係で月、火、金、日曜が部活だ。まあ、この時間に起きてしまっては平日でもサボる気でいたけど。


15時間近くも寝ていたのか。そんなに酔っ払ってしまったのか。


さすがに反省した。すきっ腹に酒を入れてはいけないと話では聞いていたけど、ここまでひどいとは思わなかった。二本でほとんど泥酔状態だったし。


これからはご飯の後か何か食べながら飲まないと。


テーブルに視線を移して、あたしの心がささくれ立った気がした。


昨日の夜ペンケースから取り出した、カッターナイフ。


昨日のまま、刃は出ていた。その刃先にはわずかに赤いものがついていた。


「……危な」


あたしはベッドから出てカッターナイフの刃を閉まって再びテーブルに置いた。何かの拍子で床に落ちて足で踏ん付けでもしたら大変だ。想像するだけで背筋が凍る。


そう、これは本来人を傷つけるためにあるんじゃない。


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