さあ、好きになりましょうか。
それからそんな夜が度々あった。


酒に弱いことをわかっていながら酒を一気に煽って自分の不甲斐なさに苛まれる。


関谷に会う日はこの行動が特に顕著になった。


関谷はあの後も、何事もなかったようにあたしの元にやってきた。あの日のことは何も言われなかった。関谷らしいと思ったけど、関谷らしくないとも思った。


あたしは関谷を見る度に言いようのない罪悪感に苛まれるようになった。


関谷に会いたい。一人でいるときは素直にそう思うのに、関谷を目にすると途端にその場から消えてしまいたくなった。


関谷は変わらずあたしに笑いかけた。抱き着くことはなくなっていた。あたしは、以前に増して邪険に関谷に接していた。


好き。好き。嫌だ。どっか行って。お前なんか見たくない。話しかけないで。


矛盾する二つの感情。本当は大好きなのに。


そんな感情からあたしは逃げた。あんなに嫌いだったカッターはその度にその刃を覗かせた。


誰か助けて。誰か教えてよ。


答えは最初からわかっていた。あたしはその答えから目を背けた。


逃げるために、あたしは自分の手首から赤い液体を流した。


< 120 / 148 >

この作品をシェア

pagetop