さあ、好きになりましょうか。
自分の血を見るとなぜかよく眠れた。


酒を飲むと脈が速くなるし体が熱くなるしでいつもよりなかなか寝付けないことが多かった(関谷が傍にいた時は例外だ)。


でも、手首から血が流れる様を見るとなぜか安心した。自分のやったことを償えたという錯覚に陥るのだ。


ほんの一瞬だけ、あたしは自ら招いた罪悪感から解放されていつのまにか眠りにつく。


こんなことをしても何の解決にならないことは、目覚めるといつも思う。そして再び罪悪感に苛まれるのだ。


関谷のことと、自分で自分にしたこと。罪悪感は日に日に膨れていく。


痛みは感じない。小さい頃指を切ってあんなに痛いと感じていたのに、今手首を切っても痛みは全く感じない。


ただ皮膚が裂けてそこから血が流れる。その様子をただじっと見るだけ。


素面(しらふ)の時はこんなことはしない。まともに痛みを伴うことはわかっていたし、何よりその行為をいけないこととわかっていたからだ。素面の頭ではわかっているから、余計に罪悪感が募る。


酔うとあたしは一時的に触覚が麻痺するのかもしれないと、酔っ払って思考回路がおかしくなった頭でぼんやりと考えていた。


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