さあ、好きになりましょうか。
いつもまっすぐで、素直な関谷。


内気で言いたいことも言えなくて、いつまでもうじうじしているあたし。


関谷に、あたしはもったいない。元気な関谷に根暗なあたしは似合わない。


好きになってはいけなかった。知り合ってはいけなかった。出会ってはいけなかった。


お願いだから、あたしじゃない他の女の子を好きになって。もっと関谷に似合う女の子は他にたくさんいるから。


そう思うのに、同時に胸がギリギリと鷲掴みされたように痛む。嫌だと本当は叫びたい。嫌だ。あたしだけを見ていて。それがたとえいつか関谷を苦しめることになろうとも。


あたしはわがままだ。関谷の笑う顔が見ていたいだけなのに。どうして自分のことはどうでもいいと思えないのだろう。どうしてあたしも笑っていたいと思ってしまうのだろう。


そう考えては今日も酒を煽る。冷蔵庫の酒はそろそろなくなりそうだった。またあの居酒屋に行っておじさんに酒をもらおうか。


関谷の笑顔を思い出すと、あたしは一粒涙を零した。大好きなのに、今は思い出すと悲しくなる。


あたしには眩し過ぎる。お願いだから、遠くへ行って。


嫌だ。傍にいて。あたしにその笑顔を向けていて。


こんな自分が嫌いだ。好きならそう言えばいい。傍にいてほしくないならそう言えばいい。どうしてそれらはいつもあたしの喉に引っ掛かってしまうのだろう。


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