さあ、好きになりましょうか。
授業中は全く神田の方は見なかった。話し掛けられることもなくて、危うく隣に神田がいることを忘れそうになったくらいだ。


少しだけ、神田とのことを過去にできているのかもしれない。


授業の後、次は空きコマだから購買に行こうと思って立ち上がったら、「あ、愛子、ちょっと」と神田の声が引き止めた。


「……何?」

「この後さ、時間ある?」

「嫌だ」

「俺まだ何も言ってないじゃねえか……そこまで邪険にされると逆に清々しいな」

「そりゃどうも」

「な、ちょっと付き合ってくんね? すぐ終わるから」


あたしは思わず後ずさりして神田と距離を取った。


「……取って食いやしねえよ。食堂に行くんだよ」

「だったら、いいけど」


前ほど本気で嫌がっているわけではなかった。


< 126 / 148 >

この作品をシェア

pagetop