さあ、好きになりましょうか。
購買は食堂の隣にある。あたしは購買で飲み物とお菓子を適当に買って、食堂に行って神田と向かい合って座った。


「で、どうしたの? あんたから誘ってくるとか、いつぶり?」

「そうだな。大学入ってから俺らゆっくり話してなかったもんな」


あたし達は高校まで、部活がない放課後はいつも教室に残って暗くなるまでずっと話していた。何を話したかなんて今は全然思い出せないけど、あの時のあたし達は話題が尽きなかった。


あの時は楽しくて、それ以上に幸せだった。好きな人と話すだけでいつも幸せだった。


今は神田と話してもそうは思わない。ただ、この空間が嫌だとも思わない。きっと、関谷を好きにならなければこんなにも早く神田とのことを過去にできなかったはずだ。


「ごめんな」


唐突に謝られた。あたしはストローで吸っていたカフェオレを一瞬止めた。


「どうしたの」

「今まで愛子を散々振り回してきたなって、今更思ってさ」

「ほんと、今更でしょ」


あたしはストローから口を離して、「気にしてないから、もういいよ」と呟いた。それからポテチの袋を開けて神田に差し出した。「いただきまーす」と神田が笑って手を伸ばした。


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