さあ、好きになりましょうか。
「実は、愛子に告白した三日後にユミちゃんに動物園に誘われたんだ」

「ユミちゃんって誰?」

「この間俺と一緒にいた子。可愛いなとは前から思ってたんだけど」

「で、あたしはそのユミちゃんに顔で負けたわけだ」

「そういう言い方やめろよ。愛子はほんと変わんねえよな、自分を皮肉る感じ。自分を下に見すぎだ」


長い付き合いなだけあって、神田はあたしの性格を知り尽くしている。そういえば、関谷にも出会ったその日に言われたっけ。


あたしはそんなにわかりやすいだろうか。


「実際そうでしょうが。ま、あたしもあの時見たけど、かなり可愛いよね。あたしも男だったら惚れてる」

「でも、それまでは愛子が好きだった。これは本当だ」


あたしはじっと神田を見つめた。目は真剣だ。好きだった分、他の人よりこいつのことはよく見てきた。今でも目を見るだけで冗談か本気かを判別できるくらいには。


「信じてもいいけど、あの時嘘ついたのはやっぱりどうかと思うよ」

「あ、あれは、だって、愛子が男連れてくるから、つい…………」

「年下にはかっこつけとけってやつ?」

「んー、違うかな。あの時はまだ愛子に傾いてたから、あいつに取られたくなかったってのが本音かな」

「でも、三日後くらいには完全にユミちゃんに向いてたでしょ?」

「さすが、愛子さん」


感服しましたと頭を下げる神田に、あたしはつい笑ってしまった。


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