さあ、好きになりましょうか。
「神田、あんたは素直なのがいいところだけど、素直過ぎるんだよ。関谷すら驚くよ」

「関谷って、こないだ連れてった奴?」

「そうだよ」

「…………ていうか」


神田が頭を起こしてにっと笑った。


「……何よ」

「愛子に名前で呼ばれたの初めてかも」

「は?」

「愛子ってさ、昔から俺を呼ぶときあんたとかお前って言うじゃん。こんなに一緒にいるのに名前覚えられてないのかなって思った時期もあったし」


そうだっただろうか。そういえば、神田と呼んだことは確かにあたしの記憶にもないような気がする。


「……なんか、神田って呼ぶことに抵抗があったんだよね。あんたとかお前って言ってる方が気楽で」

「愛子、それ関谷って奴にも言ってんじゃねーだろうな」

「……たぶん、無意識に言ってる」

「愛子のために言っとく。お前は極力やめとけ。男に言われるならともかく、女に言われると、ちょっと乱暴に聞こえるから」

「そうなんだ」

「関谷って奴は気にしてないかもしれないけど、愛子は少し気をつけな。それだけで、少しは愛子も変わると思うし」

「…………何を言ってんの?」


あたしはポテチを食べながら神田を見た。真剣な瞳をしている。何か言いたそうな顔をしている。


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