さあ、好きになりましょうか。
「な、なんだ、お前。愛子さんになんか用か」


誰から見ても神田を警戒しているとわかる関谷が、あたしを後ろから抱き締めながら腕の力を強めた。


「関谷、関谷、恥ずかしいからちょっとこの腕離してくれるかな」


あたしがぽんぽんと関谷の腕を叩くと、関谷が離れて、あたしの隣に来て神田を威嚇していた。


「ははっ、俺すげー嫌われてんなー」


神田はこの状況を楽しんでいるようにけらけらと笑っていた。


「何笑ってんだ!」とガンを飛ばす関谷を、「おいこら、むやみに威嚇しないの」とたしなめた。


「関谷、今日部活は?」

「休みですよ。だから愛子さんに会いにきたんたです。そしたら、こいつが愛子さんとー!」

「話してただけだから。しかも、神田は一応関谷の年上なんだから、ちょっと控えなさい」

「年上だからですよ!」

「わかったわかった。もう帰ろうか。あたしも部活休みだし。神田、ごめん、あたし帰るわ」


神田は声を上げて笑っていた。


「ずいぶん愛されてんのな、愛子」

「その言い方、なんか腹立つ」

「俺は本気で言ってんだけどー」

「嘘つけ。あれ、さっきなんか言いかけてなかった?」

「ああ、いいや、別に。考えてみたら、その忠犬に任せた方がいいかなって思ったし」

「おい、誰が忠犬だ!!」

「関谷、あんたも無駄に食いつかないの! それじゃあね、また明日」


「お前ら仲良しだなー」とニコニコ笑っている神田をまだ睨んでいる関谷に、あたしは余ったポテチの袋を持たせて、反対の腕を掴んで食堂を出た。


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