さあ、好きになりましょうか。
「……愛子さん」


帰り道、あたしがあげたポテチを食べながら、隣で関谷がじーっと見てくる視線が痛かった。


「何よ」

「あいつにひどいこと、されませんでした?」

「されてないよ。ただ話してただけだから」

「……本当に何もされてません?」

「されてない」

「手とか繋いでません?」

「繋いでない……って、なんでそこまで疑うのよ」

「そりゃ、愛子さんが心配ですから」

「つか、神田が嫌いなだけでしょ、あんたの場合」


関谷が黙って全て食べ終えたらしいポテチの袋を道端にあったごみ箱に捨てた。それから鞄からペットボトルの水を取り出して飲む様子をあたしはなんとなくじっと見ていた。


「あ、愛子さんも飲みます?」


あたしの視線に気付いた関谷がペットボトルを差し出してきたから、「いい」と視線を逸らした。


「愛子さん」

「何?」

「今から愛子さんの家、行っていいですか?」

「は?」


あたしは思わず後ずさって関谷から離れて構えた。


「なんでそんなに身構えるんですか」

「身の危険を察したので」

「俺、彼女でもない人になりふり構わず襲う男に見えますか?」

「頑張れば」

「なんすかそれ。いや、ちょっと外じゃ話せないことなんで。終わったらすぐ帰りますし」

「別に、いいけど」


正直な話、関谷に襲われようがもうどうでもよかった。むしろどうぞ勝手にしてくださいと思った。他の男だったら絶対上げないけど。


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