さあ、好きになりましょうか。
不意に関谷が顔を上げてじっとあたしを見つめた。それから「抱きしめてもいいですか」と言ってきた。


「は?」


聞いてきたくせに、関谷はあたしの答えを待たずにあたしを引き寄せて抱きしめた。


突然の展開に、あたしの頭はついていかない。


「せ、関谷、あのっ…………」

「俺はこういうとき、なんて言ったらいいのかわかんねえ」


関谷はあたしの肩に頭を乗せて呟いた。


あたしはそうだろうと思った。こんなものを見てしまっては普通の人は言葉が出てこないだろう。たとえ出てきても、言っていいのだろうかと思うかもしれない。


「愛子さんは今辛いと思う。でも、愛子さんはきっと俺に言わないだろうし、俺だって理解できるかわかんねえ」


関谷が抱きしめる力を強めた。関谷の息が首元に当たっている。


「それでも、俺は愛子さんが好きだ。俺は愛子さんを、女の人としてだけじゃなくて人としても好きなんだ。そういうことも含めて愛子さんが好きだ。だから…………」


最後の方は声が少し掠れていた。いつも元気な関谷にしては珍しくて、少し戸惑う。


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