さあ、好きになりましょうか。
「辛いなら、当たるのは俺にしてくれ…………」


搾り取るような声だった。聞いているこっちまで辛くなるような声で、あたしは息が詰まった。


やっぱり、あたしは関谷を苦しめる。ダメだ、これ以上傍にいてはならない。


「…………関谷、離して」

「嫌です」

「離してって」

「絶対嫌ですっ。離したら、愛子さんまた自分を傷付ける…………っ」


関谷を苦しめているのはあたしだ。一緒にいてはならない。なのに、なんでこいつは離れないの。


「…………なんで」


目の奥が熱い。関谷の温もりを感じる。体が熱くて動かすことができない。


「なんで、そんなに、あたしに優しいの」


言葉と同時に瞳から涙がこぼれ落ちた。


「ほっとけばいいのに。あたしのことなんか」

「……愛子さ」

「こんなあたしなんか、関谷に好きになってもらう価値なんてない」


かちりと、今まで抑えていたものが頭の中で切れた気がした。


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