さあ、好きになりましょうか。
「関谷はいつも好きって言ってくれる。でも、あたしは何も言えない。いつもいつも、一番伝えたいことは少しも伝えられない」


いつも、伝えたいことは喉に引っ掛かってそこから上に上がっていかない。喉はいつも苦しい。苦しくてたまらない。


「でも…………言えるわけない」


涙がボロボロと零れる。止まらない。


「伝えたければ言えばいい。言いたくなければ言わなければいい。なのに、その間でうじうじ悩む自分が一番嫌い……」


伝えたくないわけない。伝えたいに決まっている。なのに、伝えてはならないとも思っている。


なんで伝えてはいけないの? どうして伝えることを恐れているの?


ああ、あたしは臆病者だ。


「…………好き」


喉から溢れた言葉は、あっけなく消えてしまいそうなくらい、情けない声で発された。


自分にいらついていたのも、悲しくなったのも、自分を傷つけていたことも、全部、その真意は一つだ。


全て、たった一つの感情が生み出したこと。





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