さあ、好きになりましょうか。
「おーおー、今日も強烈だねえ、関谷くんの愛子へのアタック」


隣で見ていた七海がひひっと笑っている。


あたしはわざとらしくため息をついてスポーツドリンクを一口飲んだ。


「毎日毎日、ほんと飽きないよねえ」

「それだけ愛子に惚れてるってことでしょ。いいねえ、愛子にもようやく春が来たのねえ」

「いや、あたし好きじゃないんだけど」


一ヶ月前、高校生にボールを当てられた日、あたしは関谷に一目惚れしたと告白された。


かなり驚いたけど冗談だと思った。だって、こんな地味で眼鏡な女に一目惚れする輩が一体どこに存在するのだ。そう思って次の日部活に行ったら、先に来ていた関谷に挨拶をされた。そして、放課後になると外で待たれていて一緒に帰るはめになった。年下だし高校生だし邪険にするのはかわいそうと思っていたけど、その行動は日々エスカレートした。


部活の休憩中に関谷が女子の中に来て手を握ってきたときはかなり驚いた。その次の日は後ろから抱き着かれたからさすがに即座に引きはがした(本人はかなり不服そうな顔をしていた)。


いや、だって、練習後のTシャツって汗すごいじゃないですか。他人に触れられたくないじゃないですか。


この段階で出会ってまだ三日だったけど、あたしは関谷を邪険に追い返す作戦に出た。すぐに飽きて来なくなるだろうと思っていたら、いつのまにか一ヶ月が経っていた。その間の部活の日は必ず関谷があたしのもとにやってくる。例外は一日だってなかった。


さて、どうしたものか。



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