さあ、好きになりましょうか。
「愛子さん、こっち向いて」


関谷に背を向けていたら、体に手を回されてほぼ無理やり体の位置を変えさせられた。


顔が近くて、あたしは関谷の顔が直視できない。


「……ねえ、関谷」

「何?」

「いつのまにかタメ口になったよね」

「だめ?」

「だめじゃ、ないけど」


むしろ全然構わないけど。彼氏だし。


「愛子さん」

「ん?」

「これからしばらく飲酒禁止な」

「……なんで」

「これに決まってるでしょ」


関谷があたしの左腕を掴んだ。そこには赤黒い跡がまだ残っている。


あたしがリスカした経緯は関谷に話した。


「また……何かの拍子でしちゃうかもしれない。俺、もう愛子さんが傷つくの見たくねえよ……どんな理由でも」


関谷の指が傷痕をなぞる。関谷は気にしているのだ。あたしがこうなったのは自分も関係していると。


< 144 / 148 >

この作品をシェア

pagetop