さあ、好きになりましょうか。
ふと関谷が顔を近付けて、あと数センチで唇が当たるという時に、関谷がふっと笑った。


「……思えば俺、付き合う前に愛子さんにキスしちゃってた」

「ほんとだよ。あたし、あれが初キスだったんだけど」

「よかった。俺、あの時焦ってたから。愛子さんが他の男に取られんじゃないかっていつも考えてた」

「そんなことあるわけないでしょ」

「あるから心配してたんだよ」


関谷が近い。関谷の匂いとあたしが普段使っているシャンプーの匂いがする。甘くてどこか男らしい匂いだ。


その匂いを嗅いでいるうちになんとなくくらくらしてくる。


あたしにとっては媚薬なのかもしれないとふと思った。


関谷がちゅっとあたしの唇に軽く触れた。


「おやすみ、愛子さん」


あたしを抱きしめたまま、関谷は眠りについた。


あたしはといえば、そんなことをされて心臓が暴れて、とても寝られるわけがなかった。


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