さあ、好きになりましょうか。
「愛子さーんっ!!」


数日後、部活が終わると、関谷が抱き着いてきた。


「は、離れろ!」

「嫌でーす」


語尾にハートがつきそうなくらい甘い声でニコニコと関谷は笑っていた。


「とりあえず、人前ではやめてっ」

「えーいいじゃないですかー。女子の皆さんもう知ってるんだし」


関谷はあたしと付き合い始めてからすぐにバレー部女子がみんないる前で「愛子さんの彼氏でーす!」と公言した(恥ずかしくてあたしはその日関谷と口をきかなかった)。


それにしても、こいつはあたしと二人きりの時はタメ口のくせに、人前ではあたしに対しても敬語のままだ。


その使い分け方にあたしはいつもどきりとしてしまう。無自覚の策士だ、こいつは。


「じゃあ、今日家に行っていいですよね?」

「どうしてそうなる!!」


関谷があわあわしているあたしの腕を引き寄せて耳に唇を寄せた。


「キスで骨抜きにしてやりますから、覚悟してくださいね」


そう囁いて、にやりと笑った関谷にあたしは顔を真っ赤にさせた。


「…………っ!」


あまりの衝撃に何も言えなくなったあたしは、それでもこいつに溺れていくことを自覚していた。







END.


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