さあ、好きになりましょうか。
「愛子さんの家ってどこらへんなんですか?」

「大学から徒歩5分」

「じゃ、いつでも遊びに行けますね!」

「上げないけどね」


あたしは一人暮らしの大学生が集まっている住宅街の一角のアパートの二階に部屋がある。


「高校ってここから近いんだっけ? あたし地元じゃないからわかんないんだけど」

「そうですよ。それも毎年春にうちの高校の男子バレー部が大学で練習する理由なんですよ。移動も楽だし」

「へえ」


関谷はよくしゃべる。よく笑う。きっとこいつに悩みなんて概念は存在しないのだろう。


「じゃ、あたしここらへんだから」


立ち止まって関谷を見る。


「えー、家まで送らせてくださいよー」

「休みの日とかに家に来られたら迷惑だから嫌だ」

「え、なんでわかったんすか」

「バレバレだわ」


逆になんで驚くのよ。


「あたしはここらへんで大丈夫。関谷も早く帰りな」

「もう、俺を子供扱いしないでくださいよー」

「高校生だし、そんなの当たり前でしょ。9時半なんて高校生じゃだいぶ遅いでしょ」

「わかりましたよ。帰ります」

「ん、それでよし」


「明日も一緒に帰りましょうねー」なんて大きく手を振りながら帰っていく関谷を見て、絶対嫌だと口にしないで反論したら、なんだか笑えてきた。


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