さあ、好きになりましょうか。
それから、あたしは関谷から目が離せなかった。


サーブを受けて、スパイクを取って、ブロックされた球も食らいつく。


とにかく反応が速い。このままじゃ落ちるんじゃないかという球も滑り込んでボールを上げる。


あの小さな体がコートを駆け回る。それだけでコートの中の空気が変わることがわかる。


関谷が笑えば、チームの雰囲気が良くなる。コートの外から見ていてもわかる。


ああ、こいつは本当にチームの要だ。


試合はその流れのまま泉北が勝った。関谷がみんなと笑い合っていた。


「すごいなあ……」


あたしがぽつりと呟いたら、七海が頷いた。


あたしはずっと関谷を眺めていた。よく笑うなあと思った。


他の人と話してこちらに背を向けていた関谷が、不意に振り向いてあたしと目が合った。遠くにいるのに、目が合ったとわかった。どくんと心臓が高鳴った。


「愛子さんっ、来てくれたんですねー! 愛子さーんっ!!」


関谷が腕を大きく振って大声を上げたもんだから、周りにいた人達がこちらを見た。あたしは恥ずかしくなって、しゃがんで隠れた。


「あ、こら、愛子、何隠れてるのよ」


そういう七海は「やっほー」と関谷のチームメイトに手を振っていた。「七海先輩、来てくれてあざす!」と他の男子の声が聞こえる。


「関谷め……恥ずかしいことしやがって」

「せめて手振ってあげなさいよ。勝ったんだから」


あたしは顔を上げてそろりとコートを覗いた。関谷はまだ手を振っていた。


この野郎。こっちは恥ずかしいんだよ。


手を顔のあたりまで持ってきて軽く振った。関谷が驚いたのがここからでも見た。


「愛子さんが、愛子さんが手を振り返してくれたあー!!」


関谷がそう叫んだから、あたしはまた顔を隠した。「あ、関谷くん部長に叩かれた」と七海が笑っていた。


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