さあ、好きになりましょうか。
「すいませんでしたっ!!」


目の前で声がした。目を閉じていたから、誰かが説教されたのかと思った。でも、目を開けると男二人があたしに向かって頭を下げているのが見えたから、あたしが謝られているのだと理解した。


目の前の火花はまだ散っている。


「俺がうまくレシーブ返せなくて、当ててしまいました。本当にすみません!!」


向かって右側の男子が声を上げた。ツンツンとした髪の毛が特徴的だった。目は鋭い釣り目で強い意思を感じさせる。声もそこらへんの男子より低いと思った。


「いや、元はといえば俺……僕のせいなんです。僕が下手だから関谷さんも返せなくて…………本当にすみません!!」


今度は左側の男子が言った。右側の男子とは対称的に気が弱そうな見た目だった。こちらは声が高かった。


見た目からして二人とも高校生のようだ。


「つまり、愛子に当てたのは実質君ってことかな?」


部長の高橋さんが左側の男子に言った。年上の人に少し問い詰めるような口調で言われただけなのに、今にも泣き出しそうな震えた声だった。


「す、すみませんっ。僕、バレー始めてまだ一ヶ月も経ってなくてっ、それでいつも関谷さんに教わってたんです。そしたら人に当てちゃって、あのっ…………」

「大丈夫です。あたし、これくらい平気ですから」


あたしは気が弱そうな方の男子に笑いかけた。眼鏡を外しているから見えないけど、とにかく安心させたかった。


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