さあ、好きになりましょうか。
あたしは関谷から目を逸らして階段を上がった。次の瞬間、階段を踏み外してしまった。スリッパだから、普段より歩きづらいとは思っていた。


一瞬のことで声も上げられずに体が後ろへ傾く。やばい。一瞬のうちに思ったのはそれだけ。


その時、背中が何かに支えられた。おかげであたしは階段から落ちることから免れた。


「おー、セーフ。危ねー」


関谷が腕があたしを背中を支えていた。視線を横に向けると、意外にも近くに関谷の顔があって、あたしは慌てて関谷から離れた。


「ご、ごめん……」

「いえいえー。愛子さん、気をつけてくださいね」

「……じゃあ、ね」


関谷の顔がまともに見れない。声が震えてうまく出ない。


あたしはいたたまれなくなって関谷と七海を置いて階段を上った。


あんな小さい体でもあたしの体を支えてくれたこととか、腕の固さをわずかに感じてやっぱり男の子なんだと思ったこととか、関谷の顔が近かったこととか、あたしを支えてくれた関谷は重くなかったかなとか、いろいろな思考がぐるぐると頭の中を巡っていた。


頬が熱い。


後で追いかけてきた七海に散々からかわれたのは言うまでもない。


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