さあ、好きになりましょうか。
「そっか。七海もとうとう大人になったんだね」


なんとなく寂しい気もするけど、ここは親友として喜ばなければならない。


「大人になったかはわからないけど、まあ、ありがとう」

「なんか、見た目は変わらないから変な感じ」

「当たり前でしょ。そう簡単に変わらないわよ」

「そんなもんか」

「愛子は?」

「は?」


七海がじっとあたしを見てきた。


「あたしが、って何が?」

「関谷くんのことよ」

「……ごめん、主語と述語を入れて話してくれないですかね」

「愛子も、他人事じゃないのよってこと」


あたしは口をつぐんだ。


それで関谷の名前を出したのか。


「いやでも、あたしは関谷を好きじゃないし、そもそも関谷だってあたしのこと本気で好きかどうかさえ怪しいし」

「まだ言ってる。あんだけ毎日口説かれといて、よく懲りずにそんなこと言ってられるわね。確かにあの子のあれはふざけてるようにも見えるけど」

「でしょ?」

「でも、少なくとも、愛子が思ってるよりはあの子は本気よ。愛子のこともよく見てる。なにより、高総体の時のあの公開告白」

「やめて、今思い出しても超絶恥ずかしいんだから」

「あんたも、あの子のことをそろそろ本気で考えた方がいいわよ」

「本気で、って……」

「きっぱり振るか、受け入れるか、ここらへんでけじめつけといた方が、愛子も関谷くんも今なら傷は浅くて済む。そして、受け入れるなら、愛子も私がしたようなことを関谷くんとするかもしれないってこと。これは大事なことなのよ」


あたしは七海から目を逸らした。


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