さあ、好きになりましょうか。
「うん……そうだよな。俺、最低だよな。愛子がそう言うのもすごくわかる」


彼はあたしを名前で呼ぶような仲だった。それが余計にあたしに意識させてしまう。


「でも、俺も愛子が嫌いだから振ったわけじゃない。あの時は、愛子を恋愛対象としてじゃなくて、仲のいい女友達としてしか見てなかったから。あの時少し時間をかけて考えれば愛子と付き合ってたかもしれない。でも、本当に愛子と同じ大学に進めるなんて思ってなかった。合格発表前だったし。そう考えたら迷ってる時間なんてなかった。愛子を傷つけないためにも、すぐに返事をするのが一番いいと思った」


あたしのことを考えてくれていたのだ。でも、そんなこと今更言われてもしょうがないじゃない。


「だから振った。まさか、同じ大学で今度は俺が好きになっちゃうなんて思わなかったから……」

「…………」

「あの時振ったこと、すげえ後悔してる。振られた相手に今でも会って笑ってろなんて、愛子にはひどいことをしたと思ってる。だから、少しでも俺のことがまだ好きなら付き合ってほしい。今までとは違う意味で俺の隣で笑ってほしいんだ」


あたしは黙っていた。


こういうとき何と言えばいいのだろう。何を言えば正解なのだろう。


初めて男から告白された。その事実が頭の中でぐるぐる回ってうまく考えられない。


あたしはこういうとき何と答えればいいのだろう。


その疑問だけが渦を巻いて、告白された事実と共に頭の中に存在していた。


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