さあ、好きになりましょうか。
「愛子さん、どうしたんですか? 俺が呼んでも抱き着いても心ここにあらずって感じで」

「は? あんた、いつ抱き着いたの?」

「部活の休憩中です。七海さんにも冷やかされてたのに、愛子さん、俺にも七海さんにも気づいてないみたいでした」

「…………うん。気づいてなかった」


関谷の息が少し荒い。あたしは女子の中では歩行は速い方だ。それで着いてくる関谷にも気に止めず今まで歩いていたのだ。


「……ごめん、関谷」

「俺は別にいいですよ。愛子さんが俺を相手にしないなんていつものことですし」


笑いながらそんなことを言う関谷に、あたしは今更ながら罪悪感を覚えた。


「でも、今日の愛子さんはちょっと様子がおかしいなとは思ったんですよ。だから俺、愛子さんのあとをついてきたんです」


関谷がへへっといたずらっぽく笑う。


なんでそんなに無邪気に笑ってられるのよ。普通、へこむでしょ。好きな人に相手にされないって、すごく辛いことでしょ。


「…………ごめん」

「なんで愛子さんが謝るんですか? 着いてきたのは俺の勝手ですよ。それにしても、愛子さん歩くの速いですよねー。足が長いから羨ましいですよ」

「関谷、ごめん」


だめだ。これ以上、こんな純粋な子を振り回してはいけない。


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