さあ、好きになりましょうか。
あたしの話を黙って聞き終えた関谷は、なぜか口を真一文字に結んで、じっとあたしを見つめていた。


「愛子さん」

「何……?」

「やっぱりそいつ、俺好きになれそうにないです」

「は?」


関谷が動いた。何かと思えばいきなり肩を掴んできた。


「なんすか、そいつになら壊されてもいいって正気ですか!? もしその時本当に言っちゃってたら、愛子さんそいつにめちゃくちゃにされてたんですよ! 正気なんですか、それともただのばかですかー!?」

「お、落ち着け、関谷!」


やっぱりこいつに言うのは間違いだったー!(ていうか余計なことまで言っちゃったあたしがあほだったー!)


「じ、実際には言ってないんだからさ。落ち着けって、ね」

「だ、だって、だってだって!」

「現にあたしはまだ処女じゃボケェー!」


やべ、また言い過ぎた。


はっとしてそう思った時にはあたしから関谷は離れて俯いた。


「あ、ごめん、ちょっと言い過ぎた……」

「いいっすよ、別に……俺は」


そうですね。どちらかと言えばあたしの方がやばいですよね。好きな男に壊されてもいいと思ったとか、自分が処女だってことをカミングアウトしちゃったあたしの方がやばいですよね、いろんな意味で。


俯いた関谷はまた顔を真っ赤にさせていた。


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