さあ、好きになりましょうか。
「……ていうか、どうするんですか、返事。返事待たせてるってことは、期待持たせてるってことですよ」

「うん、知ってる」


あたしが頷くと、関谷は俯いたままため息をついた。


「愛子さんも罪な女だよなあ。無自覚で二人の男を翻弄しちゃってるんですから」

「翻弄? あたしが関谷を? むしろあたしが翻弄されてる側だと思うけど」

「してますよ、十分。俺、愛子さんがそいつになんて返事するかって今から気が気じゃないですよ。待たしてる分、返事は悪いものじゃないことはわかってますし」

「いや、断るよ」


あっさりと答えたあたしを関谷は信じらんないといった顔で見ていた。


「……何よ。何か文句ある?」

「いや、まさかこの短時間で回答を変更するなんて思わなかったんで」


今度はあたしがため息をついた。片膝を立てて前髪をかきあげた。


「あ、愛子さん?」

「告白されたって言ってもさあ、あたしにとっては所詮過去の男なんだよねえ。確かにそいつに対しての気持ちを忘れたわけではないけど、ぶっちゃけ今あいつといても疲れるだけでさあ。一度振られてるからお互い変に気を使ってる感じとか、なんか嫌なんだよね」

「……愛子さん、告白された側なのに、そんな態度ですしね。名前もこれまで言ってませんし」

「嬉しくないわけじゃない。でも、あんな気持ちにもう一回なれるかといえばそれはまた別問題。ていうか、こっちから願い下げ」


考えることに疲れるとすべてを丸投げしたくなる。そうなるとあたしはだらしなくなる。こんなあたしを関谷はどう見ているのだろうか。


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