さあ、好きになりましょうか。
「本当に好きじゃないんですか?」

「さっきから言ってるじゃねーか!」


なんでだろう。あたしはなんで年下相手にムキになっているんだろう。


関谷はニッと笑ってみせた。


「よかったです」

「え?」

「俺にそこまで言ってくれるってことは、俺にも少しは可能性があるってことですから」

「…………」


なんとも嬉しそうな顔を見せる関谷に、あたしは何も言えなかった。


「……ああ、そう」


やっと言えたのはそれだけだった。


だめだ、関谷の顔がまともに見れない。


「それにしても、神田って奴も変わってますよね」

「え?」

「だって、大学生でデートの場所が動物園って……」

「…………ああ」


うん、それはあたしも思ったわ。


今日、あたしと関谷は神田の行動を尾行するために市内の動物園に来ていた。


あたしが関谷に涙を見せてから10日ほどが経っていた。恥ずかしくて、あの出来事は関谷の記憶から消してやりたいくらいだ。それで関谷が茶化してくることがないのがまだ救いだろうか。


神田とあたしは同じ学部だ。それで学部の中に神田やあたしと仲がいい女子がいるから、その子に今週末学部で一番美人の女子とデートに行くという情報を聞いた。


あたしがその子に神田に告白されたことを話していなかったから聞けた情報だった。それでも、何だそれとは思った。あたしに告白してきた10日後に他の女子(しかもあたしとは対称的な相当の美人)とデート? しかも動物園とは何というチョイスだ。


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