さあ、好きになりましょうか。
尾行しようと誘ったのはあたしだった。動物園に女子大生一人で行くのは周りに不自然に思われるだろうし、そもそもあたし自身がどうしても気が引けるし、誰かと一緒ならまだましかなと思ったからだ。


別に関谷でなくてもよかったけど、実年齢より幼く見える関谷なら動物園に連れ出してもあまり違和感がないと思ったからだ。


「愛子さん、それって神田って奴が遊園地に変更したらどうしたんですか」


関谷が拗ねたように眉間に皺を寄せていた。


「あ、怒った?」

「そりゃ幼く見えるのは自覚してますけど、あんまりいい気はしないですよね。遊園地だったら自分が大学生とデートしてるように見える男誘ったんですか?」

「んー……そこまでは考えなかったけど」


あたしはさっき買ったジンジャーエールを一口飲んだ。炭酸の刺激が喉を刺して、あたしは一つ咳をした。


「あたしあんまり仲がいい男子いないから、それでも関谷を誘ってたかも。服装は年相応に見えるようにしてって頼んだかもしれないけど」


……怒ったかな。上から目線だって思われたかな。


ちらっと隣の関谷を見ると、関谷もあたしを見ていて目が合った。関谷はもう眉をしかめていなくて、「なら、よかったです」と笑っていた。


やっぱり、あたしの方が関谷に翻弄されている気がするけどなあ。


< 59 / 148 >

この作品をシェア

pagetop