さあ、好きになりましょうか。
「ははっ、冗談だよ、冗談。そんなことしたら逆に私の立場を心配しちゃうわよ。でも、名前は教えてよ。いつも来てる高校生の名前くらい覚えたいしさ」


ケラケラと笑った高橋さんに、涙目になっていた男子はほっとしたようだ。隣の釣り目の男の子が「関谷恭です。この度は本当にすみませんでしたっ」と頭を下げた。


それにつられたもう一人は「か、垣崎文康(かきざきふみやす)です。す、すみませんでしたっ」と慌てて頭を下げた。


「愛子、どうするの?」

「え、あたしが何するんですか?」

「あんたがけがさせられたんでしょ。今の聞いてこの子達を許すか許さないかは愛子の判断よ」

「あ、あたしですか……」

「当たり前でしょ。部長が決めることじゃないわよ」


ま、まじか。部長さんが制裁を下すものだと思ってぼーっとしてましたよ。


「え、と、あの……あたし、許すとか許さないとか以前に、怒ってないですよ、全く。バレーやってる以上ケガはつきものだし、二人とも反省してるし、これ以上練習時間を割いてもらうのも申し訳ないし、あの、だから…………」


最後の方は言葉が思いつかなくてあわあわしてしまった。


「だ、そうよ。よかったわね、高校生くん達」


高橋さんは「愛子のことはあとはこっちでするから、あなたたちは練習に戻っていいわよ」と二人の背中を押した。二人は深々と頭を下げて男子の練習しているコートへと戻って行った。


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