さあ、好きになりましょうか。
「離れてるとはいえ、尾行してるなんてばれたら最悪でしょ。一応変装のつもりなんだけど」

「逆にばれますって。てか、普段眼鏡かけてるのにサングラスかけて見えるんですか? 全く見えなくて迷子になるとかごめんですよ」

「お前先輩に向かって超失礼だぞ。迷子とか関谷じゃあるまいし」

「お、俺だって高校生にもなって迷子になりませんよ!」

「小さい頃とか、走り回ってお母さんとはぐれてアナウンスで呼び出されてそうだもんね」

「お、俺のことはいいんです! サングラス、大丈夫なんですか?」

「うん。あたし紫外線当たると目が充血するから、前に度が入ってるサングラスを作ってもらったことがあって、それ持ってきた」

「……そうですか」


神田と美人の女の子の二人は動物を食い入るように見ていた。時々話して笑い合う。あたしと関谷はと言えば、たまに動物を見る他はほとんど二人の姿を追いかけていた。土曜日で家族連れが多くて目を離すとあっという間にわからなくなるから、それだけで精一杯だった。


「あ」


それでも、少し興味を惹かれる動物はいた。


「ハリネズミだ。可愛い」


背中に無数の棘を持つけど顔は愛くるしい動物だ。


「愛子さん?」


ケージの前で食い入るように見ていると関谷が隣に来た。


あたしはちらっと関谷の姿を見てから、ハリネズミに視線を戻した。なんだかおかしくなって、あたしは笑ってしまった。


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