さあ、好きになりましょうか。
関谷は自分が二人の様子を見ていると言ってくれたけど、やっぱりどうしても気になって、あたしもチラチラと後ろを見てしまっていた。


「愛子さん、さすがにばれますって。俺が見てるって言ったでしょ」

「わかってんだけどさ……」


誘ったのはあたしだし、なんだか関谷に悪い気もしている。


「俺のこと、そんなに信用できません?」

「違うって」

「それとも、やっぱり好きってこと……」

「違うってば!」


思わず強い口調になってしまって、あたしは我に返った。


これがカップルだったら別れる寸前だと思われるかもしれない。


関谷は思ったことを口にするタイプだ。それはいい。変に溜め込むあたしより付き合いも楽だろう。でも、今はそれが少し苦痛だ。あたしが関谷を信用していないとか、神田をまだ好きだとか、あたしの行動を間近で見ていればそう思ってしまうだろう。それでも、それを口にされると今は癇に触る。


関谷はあたしの口調に驚いたらしい。唇を噛み締めてあたしを見ていた。


罪悪感と憂鬱で、あたしはいたたまれなくなった。


なんとも、情けない。


「ごめん…………ちょっと、トイレ」


自分の方が年上のくせに、なんて大人気ないのだろう。


< 64 / 148 >

この作品をシェア

pagetop