さあ、好きになりましょうか。
「まあ、何も知らなかったら誤解するのも無理はないと思うよ。愛子に告白してすぐに他の女の子と出かけるなんて、ね。でも、俺は今日一緒に来た子には何も特別な感情は持ってないし、俺が好きなのは愛子だけだから」

「…………」

「って、伝えといてよ。愛子が安心してくれればいいけど」


しねーよ。


あたしは思わず声に出して突っ込みそうになった。


「あなたは」


その時関谷の声がした。


「なんで愛子さんのことが好きなんですか?」

「へえ、君は愛子さんって呼んでるんだ。愛子って親しい間柄じゃないと名前呼びされると嫌な顔するから、けっこう仲がいいんだね」

「いえ、俺が勝手に呼んでるだけです。てか、俺の質問に答えてください」


そうだね、お前あたしに呼び方の許可取ったことないもんね。まあ、今更許可なんて取られても迷惑だけどね。


「ああ、ごめんごめん。なんで好きか……か。あえて理由をつけるとしたら、愛子に好きになってもらったからかな」

「…………?」

「俺、もともとあまり人を好きになれないんだよ。受け身っつーか、好きになる意味がわからなかったというか。それで、愛子に最初に告白されたときもよくわかんなかったんだよね。なんで愛子はこんなに俺のことが好きで、こんなに泣いてるんだろうってね。わけわかんなかったよ。

でも、その後気付いたんだよね。俺も愛子のことを女として見てるって。それに気付いたときは既に高校を卒業して、愛子が俺のことを以前のような目で見ていないのは俺の目からも明らかだった。諦めようと思った。でも、諦めきれなかった。だから、この間告白した」

「…………」

「愛子に伝えてくれる? 俺はいつでも待ってるからって」

「嫌です」


神田の言葉を打ち消すように関谷が言い放った。


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