さあ、好きになりましょうか。
「しかし、愛子はお人よしね」


高橋さんはわざとらしくため息をついた。


「そうですか?」

「そうよ。私だったら、高校生だろうが小学生だろうが、ボール顔面に当てられたら思いつく限りの罵倒を浴びせて慰謝料たんまりもらってるところよ」

「…………高橋さん、強烈ですね」


あの関谷と言った男の子もなかなか鋭い目をしていたけど、高橋さんもかなりすごい眼力だ。この目で睨まれたら男子ですら震え上がる。特に試合中の本気モードの高橋さんの目には誰も触れたくない。


「しかし、あの子、いい子じゃない」

「あの子?」

「釣り目の方よ。関山とか言ったっけ?」

「……いえ、関谷です」

「そうそう、関谷。実際に愛子に当てたのは垣崎って子でしょ? 普通、関谷みたいな立場の人間って、当てた人に全面的に責任押し付けるじゃない。まあ、その通りなんだけど」

「確かに」

「でも、関谷はすぐさま飛んできて一緒に謝ってくれたじゃない。責任感が強いというか、うん、いい子だわ」

「……まあ、そうですね」

「ま、いいや。この件は終わり。愛子、今から参加できる? まだ休んでる?」

「参加します。もう大丈夫です」

「じゃ、さっさと行くよ」


高橋さんはニッと笑ってコートに戻って行った。あたしも立ち上がって追いかけた。ちらりと隣のコートを見たけど、さっきの子達の姿は認識できなかった。


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