さあ、好きになりましょうか。
「人に好かれたから好きになることを否定するわけじゃない。愛子さんはあなたのことが好きだったかもしれない。でも、今の愛子さんは苦しんでいる。詳しいことは知らない。だから、俺は今の話を愛子さんには伝えません」

「まとめると、俺は君に会って10分も経たないうちに嫌われたってことかな?」

「会う前から嫌いでした」

「あはは、そこまで言う人初めて見たわ。よっぽど愛子が好きなんだね」

「好きですよ。今のところ全部振られてますけど」

「へえ。じゃあ、君には悪いけど、俺の方が優勢ってことかな?」


ニヤリと笑った神田に、あたしはもう我慢できなくなった。


「それはねーよ」


話の中心にいた人物の登場で、関谷も神田もかなり予想外だったらしく、二人ともあたしを見つめたまま固まっていた。


「神田、あんたさっきから話聞いてたけど、関谷が年下だからってなめてんの? あんたの話し方、最近なんかうざいなーと思ってたけど、随分上から目線じゃない。何、大学デビューして調子に乗ってんの? ふざけんな。誰がお前と付き合うか」

「あ、愛子……いつから」

「あ? 最初からだよ。あたしを散々振ったくせによく言うよね。何が愛子に伝えてくれよ。へたれなお前より、年下の関谷の方がよっぽど男らしいっつーの」

「あ、愛子さんっ…………」


関谷がキラキラした目で見てきたから、あたしはそれを一蹴するように睨みつけた。


「お前ももうちょい堂々としてろ。男だろ!」

「は、はいっ、愛子さん、すみませんっ!!」

「まあそれでも、このへたれ勘違い男よりはずっといいけどね」


今度は神田をじろりと睨みつけた。こいつはもう関係ない。全部言ってしまえ。


< 70 / 148 >

この作品をシェア

pagetop