さあ、好きになりましょうか。
「お前の浮気性はわかりきってんだよ!! あたしが好きとか言いながら、さっきからあの子のことチラチラ見てんのバレバレなんだよ!!」

「えっ、そうなの?」


関谷が拍子抜けした声を上げた。


「え、嘘。全然気付かなかったんだけど」

「あ、愛子さん、本人も無自覚なんですけど……」

「大丈夫。あと三日もすれば、あたしのことなんか綺麗さっぱり忘れてあの子のことで頭がいっぱいになるから。これ、こいつの毎回のパターンだから」

「愛子さん、なんかお母さんみたいですね」

「あたしが何年見てきたと思ってんだ。今じゃ目線の動きでわかるわ」

「……愛子さん、俺のことストーカーなんて言えませんよ」

「どっちみち、あたしは神田と付き合う気はない。告白された時は確かに嬉しかった。でも、あたしにとって神田はもう過去のこと。もう、終わらせたい」


正直、神田に振り回されるのはもう疲れた。だから、もうほっといて。


「ていうか、そこあたしの席だから、さっさとあの子の席に帰りな」


あたしの重圧に何も言えなくなった神田は、黙って立ち上がった。何か言いたそうな顔をしていたけど、何も言わないから無視した。


「あと、もうあたしみたいな被害者を出さないで」


神田が聞こえていたかはわからない。ただ、関谷が首を傾げたのを見て、何となく安心したのは確かだった。


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