さあ、好きになりましょうか。
「あの人とのことで俺にまだ話してないこと、ありますよね?」

「……野生の勘ってやつ?」

「まあ……何というか、愛子さん、動物園であの人を見てるときかなり思い詰めた顔してたんで、なんとなく、ですけど」

「そんなにひどかった?」

「サングラスしてたんで、他の人には気付かれなかったかもしれないですけど、俺にはそう見えました」

「関谷、さっきの神田の時とは大違いじゃん。さっきもこんなふうにズバズバ言えばよかったのに」


あたしの言葉に、関谷が苦い表情を浮かべた。


「あー……俺、ああいうタイプ苦手なんです。変に理屈っぽい奴ってわかると、途端に人見知りするんですよ。こいつにはあまり話してはいけない、みたいな」

「それも野生の勘ってやつ?」

「そっすね。てか、俺のことばかにしてません?」

「してないよ。むしろ、すごいと思うけど」


関谷は黙ってお茶を飲んだ。


「あるよ、話してないこと。でも、今この場では言えない。あたしが気分悪くなるから」

「……そんなにですか」

「気分悪くなるというか、食欲なくすって感じかな。だから、今度話す。隠すわけじゃない。だからその時は聞いて」


関谷が頷くのを見て、あたしは笑ってみせた。


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