さあ、好きになりましょうか。
「愛子さん、また行きましょうね!」

「行かねーよ! 尾行なんかもううんざり」

「自分から誘ってきたくせにー。俺も頑張ったじゃないですかー」

「ご飯奢ったんだからもういいだろ!」

「愛子、後でみっちり聞いてやるからね」


あたしの後ろで七海がにっこりと笑うのが見えた。


「あー……もう、関谷が余計なこと言うから!」

「俺っすか!? 人のせいにするなんて大人げないっすよ、愛子さん!」

「あんたの精神年齢よりは上だから安心しな」

「俺のこと下に見すぎっすよ!」

「事実だから」


関係性が変わるわけじゃない。関谷の扱いが変わるわけでもない。


それでも、あたしは自覚してしまった。


関谷に言わせれば、あたしは『好きになってもらったから好きになった』のだろう。確かにその通りだ。関谷があたしを好きになってくれなきゃ、あたしと関谷はこんなに話すことはなかったし、関谷の知らない側面を見ることもなかった。


『俺にしといてくださいよ』


たぶん、あたしはあの時既に惚れていたのだと思う。



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