さあ、好きになりましょうか。
それから3時間ほどの練習を終えて、あたしは着替えて七海と帰ろうと、準備が遅い七海を外で待っていた。


あれから少し厳しい練習をしたけど視界には全く問題なかった。


しかし、それにしてもさっきの顔面にボール当たったのは痛かったなあと思い出して苦笑が漏れた。


初心者だって言ってたけど、その割には威力がかなりあって痛かった。たぶん、これからうまくなるんだろうな、垣崎くんは。ちょっと気が弱そうだけど。


「あ、あの…………あ、愛子さん!」


呼ばれた。振り向く。振り向いた視線の先にはさっきの高校生がいた。そして、声をかけてきたのは関谷くんの方らしかった。さっきの練習の時はジャージだったけど、今は高校の制服、学ランだった。


「愛子さん……で、いいんですよね?」

「あ、うん…………えと、なんであたしの名前……」

「部長さんから何回か呼ばれたのを聞いたんで」

「ああ、なるほど」

「あの、そういえば名前を聞いてなかったなと思ったんで、教えてくれませんか」


関谷くんはずいぶんはっきりとした物言いだった。


「あ、はい。武中愛子といいます。先ほどはどうもお世話になりまして」


関谷くんに向かって頭を下げてみたけど、お世話になったのはあたしの方か? と一人で突っ込んでしまった。


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