さあ、好きになりましょうか。
関谷は誰とでも仲良くなれるタイプだと思う。特に先輩から可愛がられるタイプだ。人懐こくて、話が尽きなくて、笑いが絶えない。だからこそ一年生からずっとリベロをやってこれたのだと思う。実力だけでは、チームの要にはなれない。


いいなあと思った。自分がそうなりたいとは思わないし、なれるとも思っていない。それでもいいなと思った。


関谷が先輩に笑っている。遠くから見ていても、関谷はいい笑顔を人に向ける。可愛いと思うし、愛しいと思う。そう相手に思わせるものが関谷の笑顔にはある。


あたしにはないものだ。


「愛子、愛子」


隣の七海があたしの肩を叩いた。


「え?」

「かーお。ここに皺寄ってるよー」


七海が自分の眉間を指差した。


「……あ。ごめん」

「別にいいけどさ、機嫌悪くなると顔に出る癖は損だよー」

「別に機嫌悪くなんか……」

「嫉妬してるでしょ」


七海に言われて、何も言い返せなかった。


「私の目はごまかせないよー」


七海がにやりと笑ったから、あたしは「……さすが、恋愛マスター」と言っておいた。


「そうじゃなくて、愛子を傍で見てたらわかるよ。『デート』に行く前後から関谷くんを見る目が変わったもん」


七海には、『デート』の出来事を洗いざらい吐かされた。


「今日、飲みに行こうか」

「え?」

「近所の居酒屋に行こう。愛子、明日授業は?」

「……2限から」

「じゃ、決まり。私も午後からだから酔い潰れても問題なし! じゃ、帰るよ」

「え、え……」


「関谷くーん! 今日は愛子借りてくからねー!」と言い放った七海に、あたしはなすすべもなく後に着いていくしかなかった。


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