さあ、好きになりましょうか。
大学のすぐ傍には小さな居酒屋がある。学生がたくさん住んでいる住宅街の中にある居酒屋だけど、あたしはそこに一度も入ったことがなかった。


あの後着替えて初めて居酒屋に入ったあたしは、さっき残した嫉妬よりも戸惑いの方が大きかった。


カウンター席が五つと四人掛けのテーブルが二つと、こぢんまりした居酒屋だった。カウンターの奥では店主らしき中年のおじさんが何かを作っているようだ。


「ここなら、いくらでも話せるでしょ」


七海はそう言ってウーロンハイとチャーハンを注文した。あたしはレモンハイと豚骨ラーメンを頼んだ。


「……あの、七海」

「私はもう二十歳過ぎてるから心配しないで。愛子は本当はだめだけど、まあ見た目で大丈夫でしょ」

「……それはあたしが老けて見えるということかな?」


七海は一浪して大学に入ったから、先月の誕生日で二十歳を迎えた。大学に入ると、年齢より『学年』に左右される。


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