さあ、好きになりましょうか。
先にあたしの豚骨ラーメンが来た。あたしは熱いスープの中に沈んでいる麺を啜りながら、頭の中が混乱しかけていた。


「……私の話し方が悪かったね、ごめんごめん」


そんなあたしを見た七海がくすくす笑った。


「別に勘違いがだめとか言ってるんじゃないの。それに、今抱えているが勘違いとか錯覚かなんて後にならないとわからないし、後になってもわからないことだってある。そんなこと、『今』の自分にわかりっこないんだから」


七海はウーロンハイを飲み干した。


「でもね、これだけは聞いて。好きだって言う気があるなら、その気持ちが本物だって自信を持って言えるかよく考えてほしいの。好きになった経緯なんてぶっちゃけどうでもいいのよ。好きになってもらったからとか、助けてもらったからとか、理由なんてどうでもいい。ただ、その好きな気持ちが本当かどうかはすぐに決めつけないで、しっかり自問自答してほしいの」


ズルズルとラーメンを啜る音が響く。「愛子、あんた女の子なんだからもう少し音立てないで食べなさいよ」と七海に怒られた。


「……じゃあ、答えが出なかったら」

「え?」

「七海、もし自問自答しても答えが出なかったら、どうなんの?」


七海はあたしをじっと見つめた。あたしはそれを横目で見ながら豚骨ラーメンをひたすら啜っていた。


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