さあ、好きになりましょうか。
それから一時間後、あたしはテーブルに突っ伏してすっかりおとなしくなっていた。


ジョッキ5杯を一気に飲み干した結果、あたしは胸から溢れるような気持ち悪さに襲われてトイレに駆け込んだ。胃の中身を全て吐き出して、席に戻ってくるなりテーブルに突っ伏した。


「…………きもぢわるい」

「ペース早すぎんのよ。水、飲める?」

「…………ん」


頭を起こすことすら辛くて、あたしはふらふらと頭を上げて七海に支えてもらいながらコップの水を飲んだ。


頭がグラグラする。喉がヒリヒリする。


その時テーブルに置いてあったあたしのスマホが震えた。電話だ。


あたしは再びテーブルに突っ伏したその体制のまま、スマホをタップして耳に当てた。


「…………あい」

『あ、もしもし。愛子さん?』


電話の相手は今まさに会いたいと思った奴。


「…………関谷ぁ」

『はい?』

「いま…………すげえ会いたい」

『えっ? あ、愛子さん、どうしました?』


電話の向こうで関谷が明らかにうろたえている。それを想像したら笑えてきた。


「あ、もしもし。関谷くん?」


あたしの手から七海がスマホを奪って耳に当てた。


「関谷くん今どこにいる? あ、そこならちょうどいいわ。愛子が潰れちゃってさ。私一人じゃ家まで送れないからちょっと手伝って欲しいの。場所はそこから歩いたらすぐに居酒屋があるから。そう、ごめんね。うん、じゃあね」


目をつぶりながら回らない頭で、七海の声をぼんやりと聞いていた。


< 90 / 148 >

この作品をシェア

pagetop